夏場にやってはいけないトレーニングとは?
プロ選手が考えるパワートレーニング論

ホビーレーサーとプロ選手とのフィジカルの違いとは何でしょうか。練習時間?それとも才能? 先天的な要素があったり、それぞれの生活環境が異なることはありますが、同じ人間に変わりはありません。トレーニングを実施し、体へ栄養素を取り込み、休息をとる。このサイクルはアマチュアもプロも違いはありません。では、どこに差が生まれるのでしょうか。国内最高峰のシリーズ「Jプロツアー」に参戦する小林海(マトリックスパワータグ)にインタビューし、ヒントを伺いました。

−単刀直入に聞きます。どうやったらプロ選手のように強く、速くなりますか?

自分が持つ能力を伸ばすための方法は、科学的に決まっています。人それぞれ短所や長所があるので、レースに勝つために必要な部分を補ったり、伸ばすためのトレーニングを実施しています。そのなかで個々に合った改善点を見つけることが重要なのです。でも、独りで改善点を見つけ、そのサイクルを回していくのがとても難しい。僕の場合はコーチを就け、客観的な視点で問題を見つけることで解決しています。

強く速くなる=リザルトを出せるということです。狙ったレースにピークを持ってくることが大切です。その目標に合わせて然るべきタイミングで乗り込んだり、質をあげたりパワーの値を見て調整しています。なので、オフシーズンの準備期間中は逆に学生や一般の方よりも自転車に乗っている時間が少ない時もありますよ。最初は「そんなに少なくて良いの!?」と驚きましたが、客観的な価値観を与えてくれるのもコーチをつけるメリットだと思います。その逆もあって、「そんなに乗り込む必要あるの!?」と驚愕した時もありますけどね(笑)

−パワートレーニングを最大化するためにコーチに頼るのが近道なのですね。ちなみに、パワーを向上させる以外にメリットを感じますか?

パワーメーターと共にパワートレーニングが一般的になっていますね。導入している方ならご存知かもしれませんが、その時々のコンディションによってもトレーニング方法が変わります。しかし、自分でデータを見て管理するのはとても大変で、選手の僕もそう感じます。でも、コーチが居れば示してくれるトレーニングを実施すればいいだけなので、ストレスも無くて競技に集中することができています。もちろん、トレーニングが意図する内容も理解した上で実施しますけどね。なので、僕自身もメニューを行いながら知識も付いてきました。

また、怪我をして長い期間トレーニングすることができなかったり、復帰して乗り始めたばかりの頃はパワーが全然出なくてストレスに感じることがあります。でも、数値を可視化することで安心できます。過去、同じように乗れない時期があったとして、そのデータを用いることができれば、トレースもできますからね。リビルドの目処も立てられますし、精神的にも安心感があります。

−これまでの話をまとめると、パワーメーターを使って、コーチにメニューを組んでもらうのが強くなる近道ということですね

その通りだと思います。自転車はトレーニング1回あたりの時間が長いスポーツです。もし非効率なトレーニングを重ね続けていたら莫大な損失になりますよね。コストも同様です。パワーメーターを購入するのと、コーチを就ける費用はかかりますが、無駄なトレーニングとコストを払うよりはるかに格安だと思います。

僕は「距離を乗り込めさえすれば良い」というのは最適解ではないと思います。特にこれからの季節、気温も湿度も高い中で長時間運動し続けるのはフィジカル的に良いはずがない。学生など若い選手は特に気をつけてほしい。大事なのは乗り込んだ満足感ではなく、結果を出すこと。客観的にコンディションを見てもらったり、メニューを組んでもらう必要性がもっと広まったら良いなと思っています。

−トレーニングでパワートレーニングが重要なのがよく分かりました。ちなみに、レースでもパワーメーターを活用していますか?

TOJの富士山ステージは効果がありましたね。※区間6位でフィニッシュ
20%を超える斜度が登場する「あざみライン」ではタレないことが重要です。この日、コンディションがシーズンで最も悪かったのですが、パワーの数字を考慮して、自分のペースを守ることで最善の結果を残せました。他の選手は序盤に踏みすぎてしまい、後半に失速するケースが見受けられましたね。集団からは早々に千切れましたが、オーバーペースにならなかったことで、自分を抜かした選手を後半までにほとんど抜き返すことができました。数字を見つつ、自分の感覚を照らし合わせることが大事。日頃のパワートレーニングで培った経験が活きたのだと思います。

カメレオンロードバイクトレーニング