日本のアマチュアは世界一!?
マンセボが語る日本と欧州の環境の違いとは
(前編)
ツール・ド・フランス個人総合4位を獲得した選手が日本のプロチームで走っています。フランシスコ・マンセボ(45歳)は世界各国のチームに所属した経験があり、現在はマトリックスパワータグのエースを担っています。来日してからの3シーズン、彼は何を日本で見て、欧州との違いを感じたのでしょうか。チームメートの小林海(マリノ)とのオンライン対談で日本人選手の進むべき道筋を探りました。前後編の2本のインタビューをお届けします。
©︎Itaru MITSUI
マリノ
実は日本のチームにフルシーズン所属して走るのはプロになってから初めてなんですよね。良くも悪くもガラパゴス化していると思うんだけど、パコ(マンセボの愛称)は実際来日してから今まで国内で走ってきてレースや環境についてどう思います?
マンセボ
僕はスペインのレースをはじめ、数多くの国のチームに所属し、ほとんどの大陸のレースを走った経験がありますが、日本は一番別世界ですね。子供の頃にアニメや漫画で見た景色が広がっていることに最初は驚きましたよ(笑)レースも生活環境もこれまで経験してきたものからかけ離れています。
日本はレース形態が他の国と比べるとかなり独特だと思います。同じコースを周回するサーキットレースが本当に多い。それによって、選手たちはそれに特化した走り方、練習方法を取るのは必然の流れですね。高強度のインターバルトレーニングが最も重要となるわけです。
一方、他の国に多いのはラインレースです。スタート地点とフィニッシュ地点が異なり、ダイナミックに地形を活かしたレースなのが特徴です。平地は平地、上りは上りに費やす時間が長くなります。
©︎Itaru MITSUI
マリノ
そのため、パワーの指数で中強度のゾーン3周辺のボリュームを高める必要があると思うけど、日本のレースではぶっちゃけ全然意味ないかもですね。かなりの時間かけてますけど(笑)
マンセボ
そうだね、あまり意味はないかもだね(笑)でも、いつか海外のUCIレースのカレンダーが復活したときに備えて、準備する必要はあるよね。来るラインレースのためにも、国内のレースに対応するためにも両立したトレーニングをしないとね。
マリノ
プロの選手たちとはレースでよく一緒になるけど、同じくアマチュア選手たちとも僕らはイベントで走る機会が多いですよね。一般的なJプロツアーの選手たちと比較してもフィジカルのレベルで引けを取らないアマチュアも出てきていると思います。
マンセボ
いつも驚かされていますよ!めちゃくちゃ速い人もいるよね!
パワーの値から考えても相当なフィジカルレベルの人が一定数います。我々のチームはホビーレースにアテンドとして参加することが多く、一緒に走る中でそう思います。
マリノ
パワーメーターがアマチュア選手にも普及していますし、トレーニング方法の取捨選択が正しくできている選手は強くなってきているんじゃないでしょうか。エンデューロイベントでは僕らは何レースもアテンドしますからね。最後のレースになってくるとムキになって走らないといけないくらい大変なこともあります(笑)
スペインだとアマチュアの雰囲気もまた違いますよね。
マンセボ
スペインでは街にトレーニンググループが1つか2つはあって、時間が合う人たちが参加しあってますよね。楽しんでグループライドをすることが目的になっている人がほとんどかな。プロもアマチュアも一緒に走りますね。僕が住んでいる街ではバルベルデグループがあります。10時20分にいつものロータリーに集合で、誰でも参加できます(笑)仕事がある人は途中で離脱したり、または途中から参加してきたり、選手は途中からメニューを始めたり…。自由な雰囲気でそれぞれがライドを楽しんでいますね。
マリノ
一方、日本人は仕事が1日の大半なので、朝や夜に1人で練習することが多いですよね。スペインとそこが異なるポイントだと思います。
僕がオフに六本木で朝まで飲み明かしてた時、帰りのタクシーの窓から高岡さん(Roppongi Express)がトレーニングに向かうのが見えました。まだ明るくなり始めくらいの早朝にですよ!めっちゃびっくりしましたよ(笑)
マンセボ
日本人はその競技に対する情熱がすごいと思う。世界一なんじゃないかな。仕事前に走ったり、終業後の疲れている中でもローラーを回したり本当に信じられないよ。俺なんて朝起きてすでにやる気がない時がある。昼間走るだけなのにね。
マリノ
時間の使い方が上手いし、エネルギッシュな人が多いので、ほんの少し練習の方向性や内容をトレーニングの専門家に指導を受けることで大きく飛躍する人は多いんじゃないかなと思います。
マンセボ
ホビーレースの仕事がさらに大変になるからこの辺にしておこうぜ!
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今回は来日してからの印象や、アマチュア選手の現状についてマンセボにお話ししていただきました。次回は日本人プロ選手が歩むべき道にフォーカス。世界トップレベルで経験を積んできたマンセボだからこそ意見できる内容をお届けします。